感想・レビュー

『ドクター☆ナナカ』親子の葛藤を描いた良作

今回はツイッターで話題のBlandocoPaloma(ブランドコ・パロマ)さんの漫画レビュー。

ロングヘアの風変わりなお医者さんが、犬耳の生える奇病をズバッと治す!

かわいいタッチの絵とは裏腹に、テーマは重いですがサラッと読ませてくれるあたりはさすが。
とにかく登場人物全員が優しい世界で、読んだ後は心の毒がスーッと抜けていきます。

束縛は愛情なのか

「親離れできないほど優しすぎる青年、スイト」が主人公。
何と頭に犬耳が生えますが、これにはちゃんとわけがある。

最初は寝癖みたいなものだったので、彼の母親が気にして切ったとたん、異変が起きる。
髪を切っただけで激しい頭痛が襲う。きっと一般の病院に行けば、まともに取り合ってもらえないような症状だ。

原因はわからず、彼は「ナナカマド診療所」の門をくぐる。
ナナカが下した診断名は「忠犬病」と呼ばれるものだった。

忠犬病って?

精神的なもので、忠犬のように親に従ってしまう人がかかる病気。
今は「いい子ちゃん」が多いから、意外と共感できる考え方なんじゃないかな。

40年くらい前なら、学校の廊下をバイクで爆走とか、窓ガラスを割るといったすさまじい「反抗」があちこちで見られたという。
反対に今は、そうした激しい反抗する子っていないからね。

反抗期っていうのは親子が一心同体でなくって、「血のつながった他人」であることをお互い自覚するための大事なことだと思ってる。
それができないと、まぁ子供は将来自分でなんも決められなくなる。

スイトの「お母さんを大切に思っている」って、完全に分離できてない子供の立場だよね。

いや~、ここの部分、心がぎゅっとなりますね。紙面には自分と同じ人間がいるな~と共感したんですよ。

うちも「分離」がうまくいったの、つい最近なもんで。
なかなか「自分の意思で決める」機会がなかったから、この忠犬病状態になってた時期ありましたからねぇ。

スイトの決断

スイトの偉いところ。
アドバイスに対して「でもでもだって」を言わなかったところ。
大体考え凝り固まってる人多いけど、ちゃんと自分の事は自分で、っていえたんだよね。

スイトのお母さんの顔は「目以外真っ黒に塗りつぶされて」いて怖かったけど、ちゃんとうけいれたんだから偉い。

 

作画の線の魅力

とにかくスッとひかれたシンプルな線が好きですね。
「思い切りのよい線」って簡単そうに見えて超難しいもんなんで。

「迷いのない、若さゆえの傲慢ともいえる自信から引かれた線」なんて、今の私には書けませんよ。

それが、このブランドコ・パロマさんの作画のすごい点。描くべき形に添って迷いなく引かれる直線、力強い曲線のデザインされたような美しさにあります。

腕の肉付きの柔らかさ、尖り気味の指先とヒールのかわいらしさ、繊細さ。

読者の好きな線と言うものを、確実に外さない。ふんわりした絵柄でありながら、線は力強く、それでいて細部の柔らかさ、繊細さも共存している。一度あなたにも見てほしい。

まとめ~セリフ外の表現も素晴らしい作品

このお話は、「新しいステージに飛び立とうとする青年の心の揺れ動き」「子供の自立に戸惑いながら、それをみとめて人間として成長した母親」の物語です。

ドクターナナカも言葉遣いこそ高圧的ですが、親切な保健室の先生のようで世話を焼くところもまたチャーミング。

機能不全家族に育った私にとっては清涼剤のようで、「そんなに気負うなよ」と声をかけられたような作品でもありました。

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スガワラ

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