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四面楚歌とはどんな故事?
「四面楚歌(しめんそか)」は、周囲を敵に囲まれ、助けのない孤立無援の状態を表す故事成語です。
もともとは、中国の英雄・項羽(こうう)が、漢軍に囲まれた場面から生まれました。
ただ、ここで疑問が出ます。
👉 「どうして漢軍が楚の歌を歌えたの?」
普通なら、敵軍が自国の歌なんて歌えるわけがないはずですよね。
なぜ楚の歌を歌えたのか
実は、この時代には「国歌」や「国の歌を教える教育制度」なんてものは存在しませんでした。
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中国は群雄割拠の時代で、国の境目がコロコロ変わる
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兵士は一つの国の軍隊にずっと仕えるわけではなく、寝返りや投降も日常茶飯事
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つまり、漢軍の中にも楚の出身者がたくさん混じっていたのです
子どもの頃から歌ってきた歌は、大人になっても忘れないもの。
そんな兵士たちが、命令されたのか自発的なのかはわかりませんが、楚の歌を歌い始めたのです。
なぜ漢軍は楚歌を歌わせたのか
ここには心理戦の狙いがありました。
もし漢軍が「漢の歌」を歌ったところで、項羽は特に動揺しなかったでしょう。
しかし「故郷の歌」には特別な力があります。
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幼い頃の楽しい記憶を呼び起こす
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友人や家族との思い出が蘇る
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その一方で「今は仲間が次々に命を落としている」という現実に直面させる
こうして項羽の心は揺さぶられ、戦意を失わせることにつながったのです。
項羽の心理|なぜ動揺したのか
項羽は城に立てこもり、食糧も尽きかけた絶望的な状況でした。
そんな中で耳に入ったのは、子どもの頃に覚えたであろう懐かしい歌。
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「帰りたい」という本能的な感情
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「自分の戦いで多くの楚人が死んだ」という罪悪感
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「もう誰も助けてくれない」という孤独感
その重圧に押し潰され、項羽と愛妾・虞美人は深く悲しみ、涙を流したと伝えられています。
四面楚歌が持つ本当の意味
「四面楚歌」は単に「敵に囲まれて不利」という意味ではありません。
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物理的に孤立しているだけでなく
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心理的にも追い詰められている状況
を表すのです。
だから現代でも、仕事や人間関係で孤立した時に「まさに四面楚歌だ」と表現されます。
関連する故事成語
四面楚歌とあわせて覚えておくと面白い成語もあります。
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背水の陣:退路を断って必死に戦うこと
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漁夫の利:二者が争って第三者が得をすること
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窮鼠猫を噛む:追い詰められた弱者が強者に反撃すること
まとめ
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漢軍に楚の歌を歌えたのは「楚出身の投降兵」がいたから
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漢軍はあえて楚歌を歌わせ、項羽に郷愁と絶望を同時に味わわせた
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四面楚歌は「孤立無援」+「心理的にも折れる」という意味を持つ
故事の背景を知ると、単なる四字熟語以上にリアルに感じられますね。